■映画・ラストマイル
ブラックフライデーというセール前に起こった爆発事件に関する物流会社の話。アンナチュラルとMIU404組が出るのは事前に聞いていたんで、これは拙者立派になった六郎と生きてる中堂さん見たら泣いてしまうかもしれないとマジでコンタクトにするか眼鏡にするか悩んだ次第。
二時間という長さを感じさせない作りで、刻一刻と変わっていゆく状況を複数視点でえがいていく形。大手外資系通販会社の物流倉庫・その下請け物流会社(羊急便)・その孫請け配送業者・顧客であるシングルマザーの家庭。大雑把にこの四点で話が進む。
主人公は物流倉庫所長エレナとサブの孔。
エレナはその言動から途中まで犯人じゃないかという疑惑の目を刑事や孔から向けられるんじゃが、それはミスリード的な感じ。
っていうか感想どっからかいたらええかわからんのだけど、もともと食品卸業で、物流倉庫抱えてた拙者は色々走馬灯のように苦労を思い出してしまって変なスイッチ入る恐ろしい映画。中間で四苦八苦する羊急便の苦労もめっちゃ分かるし、めっちゃ上からむちゃくちゃ言われるけど、売上の六割そこだから逆らえなくて、買い叩かれてキッツイのメンタルに来るし、その業務委託してる小さい配送業者がくっそ安い価格で一生懸命働いてるのとか泣いてしまう。っていうか!!佐野親子!!!業務委託されてる末端の配達員なんですけどね!!ここが予想外にぶっ刺さってやばかった。
親子って言ってもお父さんはもう老齢で、息子は息子で、勤めていた電機メーカーが潰れたもんでとりあえずお父さんのあとを継ぐ感じで今は横乗り見習い的な話なんですけどね。他の配送員に、自分が作った洗濯機の自慢してるところとかすごく自社製品に誇り持ってたんだろうなって思うし、価格競争で負けて倒産したのも辛かったんだろうなってしんみりする。
そんで、お父さんはお父さんで、休憩時間30分で弁当かっこんで、雨の日は段ボールにちゃんとビニールかけて配達して、お客さんが喜んでくれるのが嬉しいって言うけど、息子としては、やっぱ心配で「誰も親父のこと大事にしてない……」って零す所とか親が老齢の拙者ぶっ刺さって泣いてしまう。使い潰される父親をどんな気持ちで見てたんだろうか……とか考えてしまうし、逆にお父さんは「こんな事ぐらいしか教えられなくてごめんな」って息子に謝るの涙腺崩壊するわ。自分の仕事が社会を作る大事な仕事だと思ってるけど、息子もこれから苦労するのかと考えたらお父さん複雑な気持ちなのかもしれない……って思っちゃう。
最後の爆弾を自社製品の洗濯機の放り込む息子とか、ホントここにつなげるの!?って吃驚したわ。
バリバリに上の方に立って働く主人公組より、この親子に感情移入するのは年代と拙者自身が末端だかってのもあるんじゃないかと思う。
そして羊急便の八木さんとか、途中でもうむりーーーーーーー!!!!ってやけになる気持ちもめっちゃ分かるし、どうも話の感じだと元々ドライバーで現場にいた人は中間管理職になったっぽいんで、苦労がめっちゃわかって辛い。あとマジで発注とか普通にFAXってのいまだにある。アメリカから来た主人公は驚愕してたが、オンライン発注とか導入できない部分ってまだあるのよ。FAX現役よ。
結局事件の根源は五年前の社員の自殺未遂に起因するわけなんだが、ホントあんな助走つけて飛び降りるとは思わなかったし、横の社員!!なんで止めなかった!!(いや彼女も飛び降りるとは思わなかったのかもしれないが)って突っ込んでしまったが。ベルトコンベアを止めたかった。でも止まらなかった絶望。ロッカーの鍵がちゃんとさせないぐらいに精神的に追い詰められてた山崎。
そしてその死因は会社なのか、恋人であった自分なのか(同僚の証言で結婚に対して悩んでいたという証言があった)と五年間答えを探し続けて今回の事件に至った筧。
この二人に迫るのがアンナチュラル組とMIU組なわけなんです。無論現場で刈谷さんと毛利さんが指揮取って解決していくんですが、大事なピースを拾ってくるのはこの面々。
アンナチュラル組
六郎が!!!立派になって!!!泣いてしまう!!!!多分まだ研修医かな?このまま順調に成長してUDIラボに戻ってきて欲しい……。
そしてUDIラボの方はドラマのままの空気でびっくりするし、ラボに画面が切り替わる前にコインの音がするのめっちゃテンション上がる。爆上がり。シーン自体は少ないが、例えば本編中にデンタルデータによる身元不明人の照合ができるように所長が頑張ってた描写があった前提で、今回中堂さんが爆発事件被害者照合をデンタルデータを元でするのめっちゃ良かったし、殺人遊戯の白井君が事件の為に配送が遅れていた医療物資の配送をバイク便で六郎の所に届けるのとか泣いてしまう。世界が続いてるし、あの時高校生だった子が立ち直って頑張ってるの見ると、ああああああってなる。
MIU404組
陣場さんは九ちゃん出世しちゃったから淋しいなぁと思ってたら、分岐点に出てたやっぱり高校生陸上部の勝俣くんが陣場さんの相棒になってて顔を覆う。こっちも立派に頑張ってた……。BBAの心に刺さるよ……。
そして伊吹と志摩なんじゃが、これ、数年経って少しは落ち着いたかなとか思ってたけど、全然そんな事なくて、伊吹を自分の庭で放し飼いで育ててたな志摩……ってなる。いや、本編時は伊吹がフリーダム過ぎてギッチギチに手綱を握らないとヤバいと志摩は思ってたし、そういう性格だったと思うんだが、事件を乗り越えて、多分志摩の方に余裕が出てきたんじゃないかとふんわり思った次第。手綱を緩めるっていうか、自分の目の届く範囲だったらまぁ自由にさせてええか的な。お陰で伊吹相変わらずだったよ!!ビックリしたわ!!!中堂さんが丸くなってたもんで余計に!!
アンナチュラル組が間に合わなかった筧に到達し、MIU404組が間に合わせるために山崎にたどり着いた。本編履修組としては役どころが上手いなって思う。
結局なにが変わったかといえば、20円ほど賃上げされただけ。たったそれだけだったのかもしれない。そしてまだブラックフライデーは続くし、人的資源として消耗される末端は存在する。
呪いのようにあのロッカーの文字は継承されていくし、いつ破綻するかヒヤヒヤしながら世界は回ってる。
けれど、舟渡エレナは莫大な損益と、ごくごく小さいけど変化を起こして、爪先程の改善をして、漸くぐっすり眠れたんだと思う。
もうね、いつでもいいよ便ボタン作って下さいよ……ってなる。そんな急いでないのにめっちゃ早く届けてくれるの有難いけど申し訳ないんや……。