そもそも拙者は北方謙三氏の作品は水滸伝の他は三国志しか読んでいない。寧ろ三国志を読んだから水滸伝に流れたのだろうと思う。
三国志に関していうなればぶっちゃけ三国無双に嵌ったのが切欠で本を読み漁った中の1作品だった次第です。当時アホみたいに三国志に嵌り、正史・演義、その他関連本等買い集め今となっては本棚に三国志コーナー設置な状態である。その中で北方氏の三国志は随分後になって買った。ハードカバーで買い揃える財力はともかくスペースがなかったのだ。単行本で三国志がたまたま本屋で出ていたので買った訳だがコレが非常に面白かった(当時既に水滸伝がハードカバーでどんどこ発行されてる時期だったと思う)何が凄いかって拙者がご贔屓の趙雲の出番が少ないのに話にドンドン引き込まれてゆくのですよ。趙雲ラブが発端で三国志本を読んできた為に趙雲が活躍しないと面白くないと真顔で言う至極ライトな三国志ファンだったのに三国志そのもに初めて魅力を感じた作品でした。
そして呂布・曹操・馬超辺りは北方三国志で好きになった英傑です。
基本的に正史を元に書いていらっしゃるらしく貂蝉が出ないのに正直首を傾げて読み進めていたんですが、呂布に関して言うなれば本気で素敵だと思いました。短慮で粗野なイメージを一気に払拭してくれ、拙者は呂布の退場時には事もあろうか号泣しました。
色々と矛盾がある正史を巧く再構築して物語として新しいモノを見せていただきました。ええ、趙雲出番少なくても良い男がごろごろです(後に趙雲は元々人気があるのであえて出番を少なくしたというインタビュー記事を見て苦笑しましたが)
こりゃ水滸伝も絶対に面白いはずだ。と思った拙者ですが何度も言うように我が家の書庫のキャパの問題があり大人しく文庫化を待ち続けてた次第です。
因みに水滸伝は幻想水滸伝に嵌った時に一度読もうと他社の本を図書館で借りてきたのだが見事に挫折したショッパイ思い出があったりする。再チャレンジするなら北方水滸伝でと単行本になった時には迷わず買いました。
三国志と違って水滸伝は登場人物の個性が全く解らないゼロからの購読である。コレは変な先入観がないのと引き換えに名前・地名・国のバックグランド全てにおいて紙面からしか読み取れないので解らなくなったらアウト的なところもある。砂神が圧倒的に海外文学に挫折しやすいのは名前を覚えられないという辺りにあったりする。
だがしかし。流石だよ…負けたよ…な気分で一杯である。正直こんな事なら水滸伝他のを読んでから読めば良かったと後悔しました。というのも、どれだけ北方氏が水滸伝を上手にバラして再構築したか実感できなかったのである。三国志以上に矛盾点の多いと言われる水滸伝がちゃんとお話になってるのである。凄く面白かったのですよ。もっと面白さや北方氏の凄さを実感したかったなぁと…我がままな読者の後悔である。
取りあえず何が凄いかというとガンガン人が死ぬ。一応水滸伝では108星が揃うまで誰も死なないという暗黙の了解があったらしい(ゲームから考えればそうなんだろうなと思う・笑)があっさりそれを破るのですよ。もう巻を進める毎にお気に入りの人が死なないか本気でドキドキする。そして108星のメンバーそれぞれに個性があって、名前は良く覚えてないけどこんな人だったとか誰々の部下とか意外とすんなり入ってくる。コレは凄い。李姓なんて山ほど居るのに何となく覚えていたりする。
水滸伝に関しては旦那も読んでおり、総じて拙者が買って読んでから旦那に渡すので旦那にネタばれしないように気をつけるのが難儀であった。しかし単行本の帯に名前が載ったら死亡フラグ的な所もあり(数人奇跡的に回避しているが)本編で急に描写が増えたら死亡フラグとかも、あちこちに死亡フラグである。戦争なんか始まったらその戦争の合間の会話とかつい読み込んでしまう。いつ死ぬか解らないのですよ。
因みに拙者はずっと林冲がお気に入りでした。武人として凄く強いんですがどっか弱いところが見え隠れして、こいつ本当は死にたいんじゃないかと本気で心配になる人物でした。ええ、でした。死んだけどねorz…帯に台詞が乗って死亡フラグ回避して、本編中でも何回も死亡フラグ回避して、こりゃ陽令伝に出るのかと安心した所でガツンとやられました。拙者号泣です。陽令ってのが楊志の拾ってきた子供でですね、かなり後半で梁山泊に入るのですが、彼が入った所で彼の指揮する部隊がないわけです。こりゃヤバイなと思ったら案の定です。陽令と陽令の馬と林冲さん訓練してその後ひっそりと牧場に行くんですが、そこで自分も馬も年を取ったとかそんな感じの会話になちゃう訳で、その時点で拙者涙目。世代交代を暗に言ってるんでしょうけどコレは切なかった。
因みに。普通の水滸伝では林冲さん通風か何かにかかって半年ほどぶっ倒れた後畳で死亡みたいな感じらしい。それに比べたら凄く格好良い死に方だったが最後の最後で女庇って死ぬとは思わなかった。でも北方氏の林冲は死んだ嫁さんがずっと心のどこかで引っかかってる感じで描写されてたので何度か読み返したら女庇って死ぬのもありかと思って見たりする。基本的に全てのキャラクターを自立させてるので死に方を見ればそれらしい死に方で納得できるのが恐ろしい。
因みにもう一人帯に出て死亡フラグ回避してる燕青は見事に生き残りました。万歳。キャラ的に結構好きだったので嬉しい。死なないと思ってた李逵や林冲が死んで死ぬんじゃないと踏んでた武松・馬麟・公孫勝辺りが生き残ったのが意外でした。彼等はまだ成すべき事があるんでしょうね。李逵に関して言えば宋江が死亡確定な訳でそうなると生き残る理由がなくなるんですよね。宋江に出会って、宋江を慕って彼は梁山泊にいたのですし。
北方氏に言わせてたら勝手に死んでゆくらしい。それは死の美学みたいなものなんでしょうね。死って言うのは平等に訪れるものでそれが早いか遅いかだけの事。いかに生きていかに死ぬか、北方氏の書く英傑の死はどれも印象深いものでした。無論志半ばに散った者も沢山いましたし、それでも死が訪れる瞬間まで彼等は輝いていたんだと思います。この辺はハードボイルド作家だなぁと思ったります。ハードボイルド作品読んだ事ありませんが(笑)
月に1冊づつがまどろっこしい作品でしたね。続き気になるとか本気で読み終わった後毎月思ってましたし。でも北方氏6年近くの連載一度もお休みなかったらしいですね。神だと思いました。
現在出てる陽令伝に関しては取りあえず文庫待ち…の予定。旦那と本屋に行く度に読みたいねーと言ってます。
取りあえずこの感想を書くに当たって水滸伝の辞書をPCに入れてみた。非常に便利である。三国志辞書は昔入れたんですがね。一発変換してくれるのでいいです。お名前入れてあげると渾名と星も出てくるのですよ。スゲー。そして宋江が天魁星であるのを始めて知りました。主人公だったんですね宋江さん(幻想水滸伝では天魁星が主人公の星だった)
本を読むと創作意欲が湧く。書くことが拙者はまだまだ楽しい幸せな人間であると思います。子供の頃から一杯かいてるのにまだまだ書き足りない。一杯お話を作りたいし、一杯キャラクターを旅立たせたい。二次創作も楽しいけどいつか自分が描いた世界のお話を書けたらと思います。