*彼岸境界*

「お前それ新しいの買ったほうがよくね?」
 部屋で雑誌を読んでいた十四松は、兄であるおそ松からそう声をかけられて首を傾げた。
「袖。伸びきってるじゃん。生地薄くなって風通しまくりじゃね?寒くね?」
 そう言われ、十四松は伸びきってプラプラしている袖を勢い良く振って、触手〜、と声を上げる。
「あっはっはっは!!!!くっそ!不意打ちすんな!」
 突然の行動に思わずおそ松が笑うと、十四松は満足そうに口を開けて笑う。
「大丈夫!割りと気に入ってる!」
「そっか。まぁ、寒くなったら新しいの買えよ。金無かったら……俺はないから他に借りろ!チョロ松辺り!」
「うん」
「ちょっと!?なんで僕!?CD買ったから金無いよ!」
 大きく頷いた十四松の口は相変わらず開いたままで、ニコニコとしている。それとは逆に突然話を振られたチョロ松は驚いたように声を上げた。しかしながら、確かに十四松の袖はチョロ松も気になっていた。体格も同じ六つ子は、基本的にパーカーやつなぎ等は同じものを纏めて買う。色違いではあるが。そんな中、何故かいつも十四松だけ袖があっという間に伸びるのだ。
「……邪魔じゃない?袖」
「大丈夫!」
 チョロ松の言葉に十四松はまた大きく頷き、触手〜、とウネウネと長い袖ごと腕を振る。
「もういいってそれ!長い時間見てると気持ち悪いから!金は僕も無いけど、多分そろそろ母さん冬服買ってくれるだろうから!」
「寒くなってきたもんなー。懐は年中真冬だけど」
「誰が巧いこと言えって言ったんだよ!おそ松兄さんは真冬どころかツンドラ並だろ!?」
 おそ松の軽口に、チョロ松が勢い良く突っ込むと、てへ!と昭和のうざい顔をおそ松が恥ずかしげもなくやって、思わずチョロ松は顔を顰める。
「可愛くないからね。うざいからね」
「ちぇ。冷たいなチョロ松」
 ぶーぶーと文句を言うおそ松であったが、突然十四松が立ち上がったので、彼を見上げ口を開いた。
「どうした?」
「キャッチボールしてくる」
「そっか。車に気をつけてな」
「80メートルは固いから!」
「おう」
 噛み合ってるのか噛み合ってないのかよくわからない会話をする長男と五男を眺め、三男は思わず唖然とする。
 そもそも十四松はダントツで会話が噛み合いづらい。一松も無口ではあるが、彼の場合ひねくれてはいるが意思疎通は十分すぎるほど出来る。しかしながら、十四松はある意味長男であるおそ松同様、子供の頃のバカのまま育った上に、おそ松を上回る勢いでフリーダムなのだ。六つ子の中では比較的常識人に位置するチョロ松としては、予測不能で、ある意味一番怖い存在だと思っている。畏怖などではなく、むしろ、いつ子供が突然走りだして車に突っ込んでいくか、のような、家族が心配する怖さではあるのだが。
 腕を振りながら部屋を出て行く十四松を眺めながら、チョロ松は少し首を傾げる。
「昔からバカだったけど、いつからあんなんになったんだろ」
「いや、俺等昔から皆バカだろ?」
「そりゃそうだけど……そうじゃなくて……うーんと、いつから、笑いっぱなしになったんだろ」
 おそ松の言葉に、チョロ松はあれこれ考えながら言葉を続けた。十四松は基本的にいつも笑顔である。愛想のいい笑顔で言えば末っ子のトド松のほうが人受けする笑顔を作るのだが、十四松の場合は基本的に大口を開けてアホっぽく見える笑い方をする。別にそれが不快であると感じたことは無いのだが、あの笑顔で核弾頭のようにむちゃくちゃをするので怖いのだ。
「そりゃあれだ……」
 そこまで言っておそ松は口をつぐむ。それにチョロ松は少しだけ驚いたような顔をしたが、そのまま兄の言葉を待った。
「……忘れた」
「忘れたのかよ!期待もたせるなよ!なんか僕の知らない凄い事件があったのかと思ったじゃないか!」
「事件は常に起こってるだろ!こうやって俺達がだべってる間にも!」
「……もういいです。すみませんでした」
 会話継続が不能だと判断したチョロ松は、早々に切り上げて立ち上がると、ちょっと出かけてくる、と言い残しその場を去る。それを見送ったおそ松は、暫くは笑顔で手を振っていたが、すっと手を下ろすと言葉を零した。
「そりゃあれだろ……一松が笑わなくなったからだろ」


 小学生の頃はそうでもなかったが、年を重ねればそれぞれに個性は出てくる。六つ子とはいえ、例えば長男で弟ばかりのおそ松と、末っ子で兄ばかりのトド松では矢張り環境が違う。
 そして学校でそれぞれ部活をはじめたり、友達を作ったりすれば、それぞれ好みの違いも、性格の違いも大きくなっていく。
 演劇部に入って急激に厨二病を拗らせてみたり、人懐っこい笑顔で友達をたくさん作ったり、バカばっかりやっててもイカンとそれなりに常識を身につけてみたり。
 勉強が出来る兄弟もいれば、運動が得意な兄弟もいる。六つ子となれば自然と周りからも比べられることも多い。
「おそ松兄さん。笑う門に福来たるって本当?」
 そんな中、五男である十四松が読んでいた本から顔を上げて、おそ松に声をかけた。
「さて、どうだろうな。笑ってるほうがいい気はするけどな」
「そっかー」
 また本に視線を落とした十四松を眺め、おそ松は首を傾げた。
「なんで急に」
 本にそんなことが書いてあったのかと、おそ松は彼の読んでいる本に視線を落としてみたが、全く関係ないと思われる漫画であった。
「一松兄さん笑わなくなったよね」
「あれは笑わないんじゃなくて、笑えなくなったんだろ」
「何で?」
 心底不思議そうに十四松が尋ねたので、おそ松は困ったように笑う。
 例えばカラ松は厨二病をこじらせたが、あれはポジティブな方向だったので良かった。けれど一松はネガティブな方向に拗らせてしまったのだ。六人でバカなことをやるときはおもいっきり付き合ってくれるが、それ以外だと基本的に無口であるし、学校でも友達を特別に作っている様子はない。
 自分のことを、ゴミだ、屑だ、社会不適合者だ、と時折言っているのを眺めて、おそ松も流石に心配したが、今のところこれといって手のうちようもなく、人様に迷惑をかける塩梅で言うのならば、ダントツで自分のほうが迷惑をかけているという自覚もあって、何か助言することも出来なかった。
 ただ、きっと人間関係をうまく構築出来ないんだろうな、とはぼんやりとおそ松は思っている。
「お前運動得意だろ?」
「うん!走ると速いよ!」
「でも勉強は苦手だろ?」
「全然ダメだね!吃驚だね!」
「一松は人と付き合うのが苦手なんだよ。多分何回か失敗して、厭になっちゃったんじゃないかな。そんで、なんか笑うのも億劫になった」
「……そっか、俺も勉強苦手だから厭になる。それじゃ仕方ないね」
「そう。仕方ないよな。勿体無いけど。苦手なの強要するのも可哀想だしな。練習したら何でも徐々に上手くなることもあるけど、本人が諦めたら……まぁ、そこまでだよな」
 十四松にそう語りながら、おそ松は、あぁ、そうか、一松は仕方ないって諦めたのか、と納得した。諦めたけど、多分まだどこか諦めきれなくて、自分を卑下して、うつむいてるのだと。
「でも、一松兄さんが笑うの苦手だったら、俺が代わりに笑うよ!笑うの得意だよ!一杯幸せ呼ぶよ!」
 十四松の言葉に、おそ松は思わず心のなかで、そっちかよ!!!!と突っ込む。自分も大概アホだが、十四松もアホだった!知ってたけど!と思いながら、彼の顔を眺めていると、十四松は得意気に胸を張った。
「そんで、幸せを一松兄さんに分けてあげる。だって、俺が苦手なこと一松兄さん手伝ってくれるし。宿題とか!」
 この弟は優しいのだ。自分がバカにされることは全く気にしないが、兄弟がバカにされると腹を立てるし、困っていたら下手ながら何とか助けようとする。大概上手く行かないのであるが。そんな十四松はバカでバカで仕方ないが、おそ松は好きだった。
「……そうか。それもいいな。ついでにカラ松辺りにも分けてやれ。アイツなんか不運だし」
「カラ松兄さんは大丈夫じゃない?いつも楽しそうだよ?むしろ最近ツッコミ激しいチョロ松兄さん?トド松は友達沢山で楽しそうだし。おそ松兄さんもおすそ分けいる?」
「俺の分は一松に」
 自分の世界でのびのびと生きているという意味では充実した生活をカラ松は送っている。そうなると、最近常識を覚えてツッコミが激しいチョロ松か、と悩む十四松におそ松はそう伝えると、彼の頭を撫でた。
 六つ子だけれど同じではない。それは知っている。だからこそ、足りないものを補って生きていければきっと幸せなのだろうとおそ松は漠然と思っていた。
 後にそれはパチンコで一人勝ちすれば皆に巻き上げられるというおかしな形に至ってしまうのだが、それはもっと後の話である。


「十四松は?」
 ふらりと部屋に入ってきた一松の声で我に返ったおそ松は、彼の顔を眺めた後に口を開いた。
「キャッチボールやるって出てったけど」
「……三時からって言ったのに」
 恐らく十四松にねだられて一松がキャッチボールに付き合うことになったのだろう。おそ松が時計を確認すると、まだ三時には十五分ほど届かない。
 猫背気味のまま一松は部屋の隅に置いてある箱の中から自分の分のグローブを取り出したのだが、そこで十四松のグローブも発見して眉を上げた。
「アイツのグローブ置きっぱなしだし。何?ボールも俺が持っていくの?」
 ブツブツと小声で文句を言う一松におそ松は苦笑しながら言葉を放った。
「そう言えば手ぶらだったな」
「バカじゃないのアイツ」
「バカなんだろ。俺達全員」」
 おそ松の言葉に、一松はわけがわからないと言うような表情を作り、ちらりと長兄の顔を見た。しかしおそ松は十四松のおいて行った雑誌を読んでいるのか、それ以上言葉を放つ様子はない。
 呆れたようなため息を一松はつくと、二人分のグローブと、ボールを持って部屋を出ていこうとする。そこで漸くおそ松は再度口を開いた。
「あとさ」
「何?」
 面倒臭そうに振り返って返事をする一松に、おそ松は笑いながら言葉を放った。
「キャッチボールするなら十四松の袖、まくってやれよ。怪我する」
「それくら自分で出来るだろ」
「出来ないからプラプラしてんじゃないのあれ」
「いい大人が」
「いい大人だけどバカだからな。俺の次位に」
 咽喉で笑ったおそ松を眺め、一松は少しだけ眉を上げたが、そのまま黙って部屋を出て行く。それを見送りまた雑誌に視線を落としたおそ松であったが、暫くして聞こえてくる十四松の声に顔を上げ、窓から外を眺めた。
「いやいやいやいや。まくりすぎだろ。逆に伸びるだろ。一松も俺の次位にバカだな」
 視界に入ったのは、肩の辺りまで袖をまくって、元気いっぱいボールを投げる十四松と、相変わらずの猫背気味にやる気なさ気にボールを受け取る一松の姿。
 相変わらず大口を開けて楽しそうな十四松を眺め、おそ松は少しだけ瞳を細めた。
 十四松は結局、笑えば幸せがやってくると信じてそれを貫き通した。
 バカだ、狂人だと陰口を叩かれても。勉強も出来ない、挨拶は元気にするが、人付き合いは一松より幾分マシと言うレベルで下手糞だけど、笑うことだけは自分でも出来ると。他の兄弟に幸せを分けるために。
 貫き通しすぎて、本当におかしくなって、きっと本人はきっかけなど忘れてしまったかも知れない。
 あの時そんなことはない、と自分が言えば十四松はもう少し別の道を歩んだだろうかと時々思う事があった。けれど、おそ松が否定した所で、矢張り十四松はそれしか出来ないからと、信じて、貫き通した様な気もする。
 兄弟が大好きで、幸せになって欲しくて、誰よりも一生懸命な弟。
 そのうち皆がバラバラに違う道を行く日が来るかもしれないが、その最後の最後まで兄弟に寄り添うのはきっと十四松であろう。例え最終的に取り残されたとしても、兄弟が幸せならばそれでいいと笑って。
「……バカだな。けど、まぁ、俺は好きだけど」
 そう呟くと、おそ松はまた雑誌に視線を落とした。


 一松は大口を開けて空を見上げる直ぐ下の弟をぼんやりと眺める。時折伸びきった袖をブラブラと動かしている様子ではあるが、本当に空を眺めているのかどうかすら怪しい。そんな姿を見ると、一松は胸が軋んだ。
 いつから彼がこうなってしまったのか。
 どちらかと言えば一松は、空気を読まずにグイグイ来る十四松が苦手であった。おそ松もグイグイ来る方だが、十四松はそれに輪をかけて酷い。けれど、子供の頃どちらかと言えばおっとりしていた十四松は一松が手を引いていた。けれどいつしか、十四松が一松の手を取って引っ張り回すようになったのだ。
 うまく人とコミュニケーションが取れない。裏切られるのが怖い。期待を裏切ってしまうのが怖い。
 そうやっていつしか自分の殻に閉じこもるようになった一松。チョロ松等は空気を読んで無理強いはしないのだが、十四松はお構いなしに来るのだ。
 苦痛だった訳ではない。寧ろ兄弟に構われるのは嬉しいのだが、それが上手く表現できないし、嫌な思いをさせるかもしれないと思うとどうしても手を取るのを躊躇う。
「一松兄さん」
 ぷらぷらとだらしなく伸びた袖を振りながら十四松が近づいてきたので、一松は少しだけ顔を顰めて、グローブを投げてよこした。
「素手でする気だったのかよ」
「それもいいね」
 相変わらずどこか間の抜けた顔と返答。それを聞きながら、一松はおそ松に言われたことを思い出して口を開いた。
「袖」
「袖?触手見る?」
「見ない。まくれよ。怪我する」
 ぶっきらぼうに言うと、十四松はきょとんとした顔をした後に、袖に隠れた手のひらを眺めたかと思うと、笑った。
「出来ないからいいや!」
「……」
 元気いっぱい言い切った十四松を眺め、呆れたように一松はため息をつくと、自分のグローブとボールを足元に置いて彼の手をとった。
「動くなよ」
 そう言うと、一松はぎこちなく十四松の袖をまくりあげていく。
「うまいね〜」
「誰でも出来る」
「俺は出来ないよ」
「練習しろよ」
 一松の呆れたような声に、十四松は瞳を細めて笑う。余りその様な笑い方をしないので、一松は驚いた様に彼の顔を凝視した。
「一松兄さんがいるからいいよ」
「はっ。ゴミで、クズで、社会不適合者で、十四松の袖まくり係?」
 なんというバカバカしい肩書だろうか。そんな事を考えたが、大真面目に十四松がそう言っているのに気がついて、思わず視線を己の手元に落とす。
「上手だし!」
「嬉しくないねそんな肩書。一生やらせるわけ?」
「うん。一生俺には一松兄さんが必要だから」
 十四松の言葉に一松は弾かれた様に顔を上げる。すると十四松はいつもどおり大口を開けて笑っていた。
「……一生とかぞっとするね」
「俺はずっと仲良く皆でいたいよ」
 直ぐにまたうつむいて袖をまくる作業を再開した一松の言葉に、十四松はそう言葉を零した。そんなことは無理だと一松はとっくに気がついている。いつかそれぞれの道を歩く時が来る。きっとその時本当に一人ぼっちになってしまう。それが怖くて、閉じこもって、どうせ俺なんてと俯いていた。
 けれど。
 十四松は本当にそう思って口に出しているような気がして、一松の眼の奥が痛んだ。
 嘘をつけるほどこの弟は器用ではないし、そもそも思ったことを空気を読まずに口に出す。同情や慰めの言葉など聞いたこともない。ひたすら空気を読まずに好きなことをして、好きなことを言って、好きに生きている。
「お前バカだな」
「おそ松兄さんの次ぐらいだと思うよ!」
 片方の袖をまくり終えた一松がそう零すと、十四松は胸を張ってそう言った。
「反対の手」
「はい」
 お手をするように十四松が手を乗せてきたので、一松はまた袖をめくる作業を再開した。
「もういいよ。あんま俺に構うなよ」
「俺は一松兄さんと遊びたいよ!」
 会話が成立しないと思いながらも、一松は泣き出したいのを堪えた。もういいと。俺のために笑わなくていいし、笑われなくてもいいのだと。
 いつだったか、笑う門に福来るなんて嘘だよな、と愚痴を零した。人間関係が上手く行かなくて、笑っていてもちっとも幸せになれなくて、失敗ばかりで、笑えなくなった一松。
 そんな一松の愚痴を聞いた十四松はその時はきょとんとした顔をしていただけであったが、暫くてバカみたいに笑うようになった。
 狂人だと、バカだと言われても笑い続けた。
 止めろと言おうとしたが、結局おそ松に彼が好きでやってるんだからお前がとやかく言うべきではないんじゃないかと言われて、何も言えなかった。
 幸せそうで、楽しそうで、けれどどうしようもなく他の人からは浮いて、それでも十四松は笑うのをやめない。
「俺といて、楽しいか?」
「楽しいよ!」
 嘘の無い言葉だと知っていた。その言葉を聞いて、一松は鼻を少しすする。すると十四松は少しだけ驚いたような顔をして言葉を放った。
「寒い?俺お金ないからチョロ松兄さんに借りて上着買う?俺の服着る?」
「……いや、多分チョロ松兄さんも金ないし。それに散々袖まくらせておいて服借りるとかないだろ」
 泣いたのではなく、寒くて鼻をすすったのだと思ったのか、十四松の放った言葉に、一松は思わず呆れたような顔をした。
「いい感じにまくり上がった!触手出来ないけど!」
「キャッチボールするんだろ」
 話し込んで気がつけば肩の辺りまでまくりあげてしまったパーカー。それに気が付き一松はしまったと思ったが、十四松は気にした様子が無かったので、黙っていることにした。
「それじゃ行くよ!」
「加減しろよ。運動得意じゃない」
「40メートルぐらいで!」
「球速か飛距離かはっきりしてくれ」
 大口を開けて言い放った十四松を眺め、一松は猫背気味にグローブとボールを抱えて距離を取った。
 いつまで兄弟でこうやってキャッチボールが出来るだろうか。
 本当に十四松なら一生望めば自分の側にいてくれるかもしれない。けれど、それが彼にとって本当にいいことなのか解らなくて、一松は僅かに顔を顰めた後に、ゆっくりと十四松に視線を送る。
 信じて、貫き通して、本当に壊れてしまった弟。
 バカみたいに幸せそうに笑う十四松を眺めて、一松は小さく言葉を発する。
「お前が飽きるまで付き合うよ」
「ホント!?やった!」
 袖をまくるぐらいしか出来なくて、キャッチボールも加減してもらわないと出来ないけど、必要とされる事が矢張り嬉しくて、一松は複雑な表情のまま、十四松の投げる豪速球を受け止め、吹っ飛んだ。


ドハマリしたおそ松さん 基本十四松流し
pixivに20151117投稿分
20160202

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