*威力絶大(IN岩田王国)*
イワッチ王国此処は箱庭電波な王様舞を舞う
イワッチ王国此処は戦場運命を変えよ彼が言う
イワッチ王国此処は楽園全てを赦せと君が言う
此処は熊本。5121小隊、スカウトの王様のいる場所
***
体育の授業、その日は珍しく我らが王様・岩田も午後の授業に出席し上機嫌で準備体操をしていた。
しかし、隣で一緒に授業を受けていた善行は思わず彼の体操を見て半眼になってしまう。余りにも周りとは比べ様も無い奇天烈な動きがちらちらと視界に入るのだ。
「岩田君。動きが違いますよ!」
思わず小声で岩田に注意すると、彼は意外そうに顔を此方に向ける。
「準備体操はコレから使う筋肉や関節をほぐす為の物でしょ?コレくらいしないと体操になりませんよ★」
…一体どんな運動をするつもりなのだ。
余計に半眼になり、我ながらお節介だと思い直し結局それ以上は何も言うまいと善行は決める。
準備体操が終わると、坂上がマラソンをすると言い出したので生徒からは厭そうな返事が返ってくる。女子は5キロ。男子は10キロ。1組はパイロットやスカウトが大半を占める為に、授業は体力作りが基本になりがちである。
「それでは頑張ってください」
坂上の声を合図に一斉に走り出す。
何周か走っていると、善行は突如後ろから声を掛けられ驚いて其方を向くとそこにはまだ体力が有り余っている岩田が爽やかに声をかけてきた。
「フフフ…もうバテちゃったんですか★運動不足ですね★」
「…貴方が体力ありすぎりんですよ」
言葉を発するのも辛いが、取りあえず言い返しておく。周りを見回しても殆んどの人が如何にも疲れきっていますと云うような表情で走っている中、余裕を持ってるのは黙々と走っている来須と岩田ぐらいなものだ。瀬戸口に至っては半分も走らないうちにリタイヤしている。しかし、岩田が後ろから声をかけて来たという事は既に周回遅れという事なので、これ以上遅れないようにしないと…と善行は疲れきった体を必死で動かす。
「岩田君――――!!一緒に走ろう!!」
いた。もう一人元気な人間が。
「フフフ…中々やりますね速水君★僕についてくるなんて!」
「君に追いつけるように体力作りは真面目にやってるからね!」
速水はにこやかに微笑むと、岩田の方を見る。彼は司令と云うディスクワーク中心の仕事に付きながらも、毎日の岩田との訓練のお陰で小隊でもトップクラスのバイタリティーを誇る。
「それではペースを上げますよ★」
「うん!」
…まだペースをあげる事が出来るんですか?と、善行は声にはならない声を思わず上げたくなる。
バキッと2組の教室にシャーペンが折れる音が響く。
「如何したの?狩谷君」
授業をしていた芳野が心配そうに狩谷の方を見る。さっきから顔色が思わしくない。
「いえ。大丈夫です」
「そう、気分が悪くなったら早めに云ってね」
そう云うと、芳野は授業を続けた。何事も無く狩谷は新しいシャーペンを筆箱から出すが、授業そっちのけで窓の方を眺める。
…おのれ――――速水め…。
岩田君と楽しそうに追いかけっこなんて…。
狩谷の視線がグラウンドに向いているのに気が付いた原は、外の体育の授業に気が付き思わず笑ってしまう。グラウンドを元気良く岩田と速水が走っていたのだ。多分狩谷には、『フフフ…速水君こっちですよ★僕を捕まえて御覧なさい★』『ハハハ待ってよ岩田君★』と見えているのだろう。コレを笑わずに居られるだろうか。
***
何とかマラソンも終わり、まだ疲れた体でグラウンドの整備をしていると善行に向かって突如岩田が大きな声で奇怪な言葉を発する。
「イワタマンカッター!!!!」
バフっと頭に何かが当たったので善行は驚いて振り向く。
「何するんですか!って云うか『イワタマンカッター』って…」
そこまで云って、善行は自分の足元に落ちている岩田の体操帽に視線が釘付けになる。あれだ。小学生に時に一度はやったであろう、紅白帽のウルトラマン被りの状態で岩田の帽子はそこに落ちていたのである。
「…貴方いい年して、こんな事やって恥ずかしくないんですか!?」
思わず帽子を拾い上げ善行は岩田に向かって怒鳴りつける。自分は体操服を着るのも少々躊躇するというのに岩田は恥ずかしげも無くこう云う遊びまでやってのけてしまうのが理解出来ない。
「駄目駄目ですねぇ。反応がなってません。そこは『グハァ!』と云って倒れる所ですよ」
「出来ませんよ!!!」
岩田の露骨にガッカリした表情に呆れながらも、求めるリアクションの無理さ加減に更に声を荒げる。
すると、岩田は辺りを見回し誰かを見つけたのか、善行から体操帽を受け取りそれを再び装着すると再び声を上げる。
「もう!そこまで云うならお手本を見せちゃいましょう!来須くぅぅぅぅぅぅん…」
岩田に気が付いた来須は此方の方をちらりと見る。
「イワタマーンカッタァ!」
来須の腹の辺りに岩田の帽子がパフっと当たると、突如来須が無言でその場に倒れた。
「嘘!?」
それを見ていた善行は思わず驚きの声を上げるが、それ以上に岩田の方が驚いたらしく、震える手でグッドサインを来須に出す。
…有難う、有難う!来須君。流石『心の友』と書いて『心★友』。その無言さが堪らなく怖い!!!!
「…いや…貴方はフォローしてあげて下さいよ」
思わず善行はそう云わずには居られなかった。仕方なく岩田の帽子を拾いに行くと、突如来須が起き上がったので呆れ顔で善行は言葉を発した。
「付き合いが良いんですね貴方。流石王様に心酔してるだけはありますね」
「…いや、俺はまだまだだ」
それだけ言い残すと体の埃を払い来須はその場を離れた。
…貴方でまだまだって事は私はピヨピヨ可愛いヒヨコちゃんって事ですか?
善行は拾った岩田の帽子を握り締めながら自称・まだまだの来須の大きな背中を見送った。
>>後書き
キリ番をダブルで踏んでくださったので、リクエストの善行SS1本じゃ悪いなぁと思って短いですが追加で上げます。
この話はヤカナ姐と電話で体育の時間云々の話をしている時に思いついたんですが、事もあろうかヤカナ姐が挿絵も書いてくれました!!万歳!!しかもSSをUPする前に書き上げる神速振りです(笑)まぁ、大方の話はヤカナ姐に何時も話すからなぁ。挿絵のほうが早く上がるって良くある事なのが…(苦笑)
今回のポイントはズバリ先輩★
最近すっかり出番が少ないですが、何故かうちの先輩ってギャグキャラっぽいんですよねぇ…(遠い目)皆さんのイメージを壊してなきゃ良いんですが…。
それではこの話は17000ヒットと20000ヒットを踏んだラッキーガール・たちゃ様へ★
>>HP移転に伴い一部改行等調整。大筋変更はありません。