*明鏡止水(IN岩田王国)*
イワッチ王国此処は箱庭電波な王様舞を舞う
イワッチ王国此処は戦場運命を変えよ彼が言う
イワッチ王国此処は楽園全てを赦せと君が言う
此処は熊本。5121小隊、スカウトの王様が居る場所。
*
その日岩田は昼休みになると急いでハンガーに向かった。
昨日の降下作戦のお陰でウォードレスの装備品が全て取っ払われている筈だったのだ。面倒な話だ、と岩田は僅かに不機嫌になるがそんな暇があるならばさっさと装備を付け直すべきだと気を取り直した次第だ。
ハンガーに着くとそこで青い髪がちらちらと見える。
「フフフ…お昼間から仕事とは感心ですね!!!スバラシィ!!!」
岩田の声に驚いて青い髪の持ち主…田辺はびくっと肩を震わす。
「あ、あの…2番機が被弾して…その…性能が下がったので…」
何時も何かに怯えたようなその表情に岩田は苦笑する。田辺としても岩田が此処に訪れた事の方に驚いていた。彼は滅多にハンガーに来ない。理由を聞いた事は無いが、誰かの手伝いで此処に来ても用事が済めば直ぐに退散してしまう。
「フフフ…僕もさっさと装備を替えたらお仕事の邪魔にならないように退散しましょう」
「?装備??」
田辺に疑問に答える気が無いのか、それとも聞こえなかったのか岩田は自分のウォードレスを探し出す。
が、事もあろうに此処で出撃要請が掛かる。
田辺は慌てて足元に散らかった工具をせっせと拾い集めるが、岩田は微動もしなかった。
「あの…岩田さん?」
恐る恐る田辺が声をかけると、彼はハッとしたような表情で彼女を見ると、少し困った顔をして笑った。
「…今日は余り良い日ではありませんね…」
*
現地に向かうまで終始岩田は黙ったままだった。普段なら戦場馴れしていない滝川の緊張を解す為に下らないギャグを云ったりと大騒ぎなのだが余りの変貌に原が声を掛ける。
「今日は偉く元気が無いじゃないの」
「…フフフ…実に困った事になりました…怒らないで聞いて頂けますか?」
「良いわよ。どうぞ」
原はニッコリと笑うと岩田に向きあった。
「装備品全部取っ払ったままなんです」
「は?」
岩田の言葉に原は思わずぽかんと口を開ける羽目になる。
「フフフ…非常にデンジャラスです!!!!コレではまるで『裸の王様』です!!僕の電波が危険だと云っています!!!!」
その場でクルンと回転するとポーズを取り原に再び向かい合う。
「何考えてるの―─!!!!!!!!!」
原の怒鳴り声が移動中のトラックに響き渡る。岩田は眉をへの字にしながら、怒らないで下さいって云ったのに…と小さな声で云う。
「何で装備品全部外してるの!!!」
「それは…まぁ、色々電波の都合があるんです…装備を付けようと思った所で出撃が掛かったんですよ」
何時もなら原に怒られるのもさらっと流す彼だが、流石に今回は笑えない状態なので取り合えず言い訳じみた事を言ってみる。原は眉間に皺を寄せながら、今日は後ろの方に居なさい、と一言だけ云うと不機嫌そうに岩田から離れた。
岩田がほっと息をつく間もなく戦場へ到着し、前線に出る。
実に笑えない状況である。
ミノタウロスやスキュラがあちこちに居る。ましてや、先日の出撃で被弾した2番機の性能はまだ完璧とは云えない状態であった。
「全く何を考えておるのだ…」
3番機に乗り込む舞が不機嫌そう岩田の方を見て呟くと、善行が苦笑する。速水が司令になって、代わりに善行が3番機に乗り込むようになってから久しい。
「…準竜師からの極秘任務を受けたようですよ彼」
「知った事ではない。軍人として考えが甘いという事だ」
善行の言葉など聞く耳持たないという舞の態度に肩を竦めると3番機に乗り込む。
本調子ではない2番機。
自称『裸の王様』のスカウト。
この2人を抱えての戦闘になると苦戦は目に見えている。
ましてや此処は激戦区なのだ。
善行と舞はいつも以上に気合を入れ、戦場に繰り出す。
*
「岩田さんは大丈夫でしょうか…」
田辺が補給車の中で心配そうに見守る。口に出さなくても皆同じ気持ちだった。
「…よりによってこんな激戦区で…」
原は爪を噛みながら戦況見守る。同盟軍は次々と撃破されてゆく。岩田は原の言い付けを守って後方の1番機の側で雑魚をちまちまと倒しているが、何時まであの男がいい付けを守るかも怪しい。
祈るような気持ちになる。
保険の利かないスカウトは耐久値がゼロになれば即ちそれは死を意味する。流石の岩田も今回ばかりは命が掛かってる事を自覚している。
「敵増援接近!!!」
オペレーターの声が響くと、一気に緊張感が走る。最悪、立ち位置によっては増援により囲まれる恐れがあるのだ。
「…撤退命令…中々出ないわね…」
原は戦況を見ながら舌打ちする。同盟軍は既に全滅に近い状態で、増援が来るとなると戦力は開く一方である。今は3号機が活躍できているが、一度被弾すれば性能ががた落ちになる士魂号で何処まで動けるかも解らない。
「増援来ました!!!」
一瞬岩田が囲まれなかった事にホッとするが、それもつかの間で行き成り岩田はリテルゴルロケットで敵陣に突っ込んでいった。
「岩田君!!!!」
補給車にいた整備班が驚いて一同に岩田の行方を追う。
戦場で孤立した2番機
それが視界に入った。
「滝川を?」
若宮は2番機の周りに蠢く幻獣を確認する。ミノタウロス3体、ナーガ4体。確かにあのまま滝川が孤立したままならば間違いなく2番機は撃破、最悪滝川の命さえ危うい。
しかし、手ぶらで倒せるほど甘い敵ではない。
他の士魂号の位置を確認するが、どの機体もバラけて戦場に居た為に間に合わないのは目に見えていた。唯一長距離移動が可能なスカウトだけが2番機を助けに行ける。
増援が来たと同時に滝川は士魂号の中で途方に暮れた。本調子ではない上に、ミノタウロスが此方に射程を向けたのだ。
「畜生!!」
この近距離でさえ弾が当たる気がしない。恐怖の所為か。
戦場に赴く時何時も岩田が云う言葉を思い出す。
『本当に強いというのは自分の力量を知っているという事です。何が出来るか、出来ないか。それを知ってる事が重要なんですよ。…諦めたらそこで終わりです。だから…出来る事を迷わず選んでください』
その後に岩田は『貴方が諦めないのなら、僕は何処に居ても貴方を助けに行きます。貴方が望むなら』と言って笑う。滝川は歯を食いしばり、ライフルを構える。
絶対に諦めない。
今日は岩田は助けに来れないだろう。
でも、出来る事をやるしかない。
それが生き残れる一番の方法だ。
敵の射程から機体を僅かでも外せば攻撃は当たりはしない。
刹那。
滝川の間の前に轟音と共に砂埃が巻き上がる。
「!?」
急に狭まる視界と同時にオペレーターの声が聞こえる。
『岩田機ミノタウロス撃破!』
砂埃が収まった瞬間見覚えのあるウォードレスが視界に入る。
武尊。
何時も戦場で見ていた彼の背中。
「フフフ…実にスバラシィ!!!!今日も絶好調ですよ!!!!!」
「岩田!!アンタ今日は後方で…」
「何を云ってるんですか!!!僕が大人しくしていると思ったんですか?心の友と書いて『心友』と読む貴方が大ピンチ★だと言う時にィィィィィ!!」
岩田は何時ものハイテンションで次の幻獣の方を向く。
「…とは云っても今日は『裸の王様仕様』なので長い間は粘れません!!…僕が華麗に敵を引き付けている間に逃げちゃって下さい」
「!?アンタ置いて逃げろってのか!?」
「フフフ…撤退は戦士として恥じる事ではありません。自ら力量を知っている証拠です。僕は出来る事しかしませんからご心配なく!!!2番機壊した事は一緒に原主任に謝りましょう!それではアデュ――――!」
そう云うと岩田は次に狙いを付けたナーガに勢い良くキックを入れる。沈む巨体を確認しながら、既に次の標的を捉えている。
「解った!!!」
滝川は既に廃棄決定と思われる2番機を捨てて後方に下がる。2番機があれば、自分に射程を合わせていた幻獣がそのまま2番機を攻撃するするだろう。岩田が狙われる確率が少し下がる。そう判断しての事だった。
「フフフ…いい判断です。大きくなりましたね滝川君、母は嬉しいですよ!!!!」
軽口を叩きながら滝川を見送ると、岩田は再びすり足で敵の射程を巧く外れるとナーガを蹴り倒す。
カトラスが無い分どうしても攻撃が大ぶりになる。しかもスカウトのキックの射程は恐ろしく狭い。
それでもギリギリの線を見切って敵の懐に飛び込む術は既に神業である。
「撤退命令が出た!!岩田戦士!早く後方に!!」
司令である速水の声が聞こえたので、岩田は滝川の位置を確認する。
まだだ、撤退ラインまで届いていない。
自分はリテルゴルロケットがあるから一瞬で撤退ラインまで下がれるが、それでは彼が敵に狙われる。
半分を切った自分の耐久値を確認しながら撤退命令を無視し、再び敵と向かい合う。
「何をしておる!!岩田!!!」
既に撤退ラインギリギリまで下がった3番機の舞が怒鳴りつける。
「…滝川君が撤退するまで粘るつもりでしょうか」
「そんな事見れば解る!耐久値が半分切ってる今の状態では自殺行為だという事が解らんのかあやつは!!」
善行の言葉に怒鳴り散らしながら3番機は撤退ラインまで踏み込む。
残るは滝川と岩田両名。
*
大破した2番機を見て、昼休みにせっせと修理をしていた田辺の事を思い出す。
彼女は『明日は良い日だ』と口癖のように云う。自分に言い聞かせるのか、それとも周りを励ますために云うのか。
時々明日が来なければ良いと思うことがある。
そうなれば何時までもこの閉鎖した世界に居られる。
何時までも『彼女』は生きているし、何時までも『王様』で居られる。この虚構世界で。
そんな事を考えて岩田は自嘲気味に、それでは本末転倒だと笑う。
いずれ訪れる王国終焉に向かい、成すべき事を成さねばならない。
世界を、肉親をも裏切ったのだ。妥協は赦されない。
残ったのはミノタウロス2体。自分の耐久値は残り僅か。
「滝川機撤退!!」
オペレーターの声に岩田は踵を返し、撤退ラインの方を向く。リテルゴルロケットの方向を確認していると、突然後ろからの衝撃に襲われその場に膝をつく。
「つっっっ!!!」
それは正に一瞬だった。
僅かにミノタウロスから注意を逸らした瞬間、強烈な攻撃を浴びせられる羽目になった。
今の攻撃でアバラがいったかもしれない。呼吸が急にし辛くなり視界が霞む。
「岩田!!!」
既に撤退した一同が悲鳴を上げる。
「俺の…所為だ…」
がくっと滝川は膝をつき呆然と戦場を眺める。
『明日など来なければ良い』
『明日は良い日だ』
撰ぶ必要も無い。明日が良い日である為に此処に来たのだ。
「明日は良い日だ…」
うわ言のように岩田は呟く。すると、その声に重なるように青い髪…幸運のブルー・ヘクサの声が聞こえる。
急に笑えた。
自分の生死すら『彼』に握られているような気がしたのだ。全てを知る『彼』に仕組まれた世界。
まだ生きろという事か。
まだ全ては終っていないという事か。
岩田は薄く笑い立ち上がると、リテルゴルロケットを起動させる。
「フフフ…ユーリ、コレも貴方の計画ですか?」
撤退ラインまで一気に下がった後の事は良く思えていない。
ただ、煩い程舞の怒鳴り声が聞こえた。
*
懐かしい匂い。
遺伝子工学者として居た施設も同じような匂いのする場所だった。
白い天井と壁。
ゆっくりと体を起こすと、此処が病室である事を理解する。
視界に入った棚には所狭しと花や果物やらの見舞い品が陳列されており、何故か名前が書いた札がぶら下っていた。
「…又速水君と狩谷君が張り切ったんですかね…」
一際2人の名前札が目を引いた為に苦笑する。何処までもライバル視し続けるつもりらしい。窓から見える風景は茜色の夕焼け。どれくらい眠っていたのかさえ解らない。
突然扉が開き人が入ってくる。
「ああ、もう気が付いていたのか」
果物の入ったバスケットを持った若宮が舞と共に病室に入ってくる。コレお見舞い、と笑って岩田に果物を渡すと側においてあった椅子に座る。
「フフフ…安月給の十翼長が偉く奮発しましたね」
「ああそれは半分芝む…」
そこまで云った所で若宮の顔が苦痛で歪む。舞が彼の足を踏みつけたのだ。
「えっと…気にしないでくれ、どうせ使い道の無い金だ」
舞に睨まれながら若宮が慌てて訂正するのを見て、岩田は舞が踏んだ足の事は忘れる事にした。余計な事を言ったと後で若宮が怒られかねない。
「どれ位経ったんですか?」
「え?ああ、出撃のあった日の夕方。倒れてから3時間位しか経ってないよ」
岩田が聞くと若宮は部屋中に陳列された見舞い品を珍しそうに見ながら答える。舞は椅子があるのにも関わらずに座る様子も無く不機嫌そうに岩田の方を見ていた。
「フフフ…偉く不機嫌ですね芝村さん。悩み事があるならこの『母』に相談なさい!さぁ!さぁ!」
岩田がおどけて云うと、舞は突然岩田の耳を引っ張る。
「痛!!痛いですよ芝村さん!!!!怪我人に何するんですか!!!」
「たわけ!!!!!何が怪我人だ!命令を無視してそなたが勝手に怪我をしたのであろうが!!!」
岩田の悲鳴以上の大声で舞が怒鳴りつける。
「助かったから良いものの、死んだら如何するつもりだったのだ!!!」
「…僕は死にませんよ。幸運の女神がついてますから」
岩田の言葉に更に舞は耳をギュゥッと引っ張る。若宮に助けを求めるが、苦笑したまま助けてくれる様子は無い。
「『王』が居なければ『王国』などありえんのだぞ…」
舞は僅かに俯くと漸く岩田の耳を放す。
「…反省してますよ…舞」
岩田の言葉に舞は顔を上げる。何時もの軽いテンションではなく酷く穏やかな、そして真面目な口調だったからだ。
「フフフ…それに貴方と若宮君が清掃会社を開くのを見るまでは死ねません!!!」
「たわけ!!!!!!!!」
舞は何時ものテンションに戻ってしまった岩田に向かって怒鳴りつけると扉の方へ歩いてゆく。
「不愉快だ!私は帰る!」
バタンと乱暴に閉められた扉を見て若宮と岩田は苦笑する。
「…心配してたんですよアレでも…」
「知ってます。最後に聴こえたのは彼女の声でしたから」
岩田の言葉に意外そうな顔をすると若宮も立ち上がる。
「俺もそろそろ帰るか。滝川に訓練に付き合ってくれって言われたるんでな」
「滝川君が?」
「…足手まといにならないようにもっと強くなりたいって」
「そうですか…」
扉の前まで歩いていった若宮がノブに手をかけながら小さな声で云う。
「…正直…あの場合は滝川を見殺しにするのが軍人としての正しい判断だと思いました。でも…貴方はそうしなかった。迷わず滝川を助けに行った…人としては最良の判断だと思います。どれだけの人間が出来るか知りませんが…自分もそうありたいものです」
若宮と入れ違いに入ってきたのは苺を持った田辺であった。
「あ…あの…」
恐る恐る部屋に入ってきた田辺は苺を岩田に差し出すと、きょろきょろと部屋を見回した。
「どうぞ、座ってください」
「あ、はい。えっと…あの…私お金がなくて…その…皆さんみたいな立派なお見舞い品を…その…」
田辺は椅子に座るとオロオロと言葉を発した。岩田は以前田辺の家に苺を貰いに行った時に、彼女の家が全焼したのを思い出してふっと笑う。
「…漸く苺が食べられましたね」
「え、は…はい」
田辺も彼の言葉に以前苺を食べようと約束したのを思い出したのか笑顔で返事をする。
「2番機…又整備やり直しですね」
「はい。でも誰も死ななかったから…私…何やっても駄目で…今回も整備が間に合わなかったから…」
もっときっちり整備出来ていれば滝川も危ない目に会わなくて済んだだろう。岩田も怪我をすることもなかっただろう。
田辺は自己嫌悪に陥る。
「…私…幸運を招くブルー・ヘクサなのに…失敗作で…何やっても人以下で…今回も足引っ張って…」
下を向きながら喋る田辺のお下げ髪を岩田は手に取ると、田辺は驚いて顔を上げる。
「!?あ…あの…」
「貴方は…優しい人ですね」
岩田の突然の言葉に田辺は顔を赤くしオロオロとする。
「幸せは、人によりけり…なんですよ。たかが科学者風情に測れる物ではありません」
田辺の髪を眺めながら岩田が言葉を紡ぐ。田辺は唯顔を赤くするしか出来なかった。
「…貴方にとって幸せなのは何ですか?」
「私…家族が皆元気で…その…この小隊の人達が…誰も死ななければ…。私…ずっとこの小隊に居たいんです」
田辺はそこまで云うと大きく息を吸い込む。
「私…私…貴方に感謝してます。何時も…こっそり仕事手伝ってくれて…それに…私が不幸を招くの知ってて…、それでも沢山話し掛けてくれて…凄く嬉しかったです。何時も『王様だから』って云ってるけど…本当に…」
足手まといにならないようにするのが精一杯で、何の役にも立てなくて。
それでも全然構わないと笑って話し掛けてくれて。
何時も助けてくれて。
「貴方がこの小隊や家族が幸せであれば良いと思っているから…僕は今日助かったんですよ。有難う御座います。貴方は間違いなく幸運を招くブルーヘクサですよ」
岩田の言葉に田辺の表情が明るくなる。今まで失敗作だとずっと思っていたのに、彼に失敗作じゃないと云われて本当に嬉しかった。
「…ずっとそのまま優しい人で居てください。貴方が居れば…この小隊に…『王国』には幸運が招かれる」
岩田はずっと持っていた青い髪を放すと、田辺の方を見て優しく笑う。
「は…はい!!私、ずっと皆さんが幸せであるようにお祈りします!岩田さんの怪我も早く直るようにお祈りします!」
慌てて田辺が返事すると岩田は満足そうに笑う。
「あ、私これで…修理をしないと…」
慌てて立ち上がる田辺に岩田が、明日手伝いに行きますと云うと、田辺は明日もゆっくり休んでいてください!と慌てて首を振る。
部屋を出ようとする彼女に岩田は笑いながら云う。
「田辺さん、明日は良い日ですか?」
「はい!明日はきっと良い日です!」
青い髪が淡く光り、彼女の肩に乗る小神族と目が合う。彼女は岩田に向かって深深とお辞儀をすると田辺に優しく微笑みかける。
「…『幸運の女神』か」
誰も居なくなった病室で岩田は喉で笑うとすっかり暗くなった窓の外を見る。
無論田辺にああ云われたが学校を休むつもりは無い。
明日が良い日であるように、成さねばならない事は山ほどある。
忙しい毎日。
広がる『王国』
迫る『運命の日』
「…コレも計画通りなんでしょうね…ユーリ」
『その答えはYesである』
居る筈の無い彼の声が聞こえたような気がした。
>>後書き
初登場田辺さんです。とは云うものの、ちょっとこの小説嘘があります。
『明日は良い日だ』イベントは4月2日にはまだ起こらないイベントなんです。降下作戦を本編で4月1日に決行したとばっちり書いてしまったので如何した物かと思ったんですが、田辺はこのイベントで話書きたかったんですよね…御免なさい。
で、恐ろしい事に『裸の王様仕様』は実話です。
プレイ日記を読んでる方はご存知でしょうが、2番機・先輩で同じシュチュエーションでばっちり死んでます(笑)
…あの時は真剣に怖かったよな…。
でも、王国シンパの悲痛な叫びはかなり頑張って良かったなぁと涙を誘いました。
小説としては結構話削ったんですがまだまだ長いですね。…若宮v舞を削ればいいという意見は却下させて頂きます(本気)コレが楽しみなんだから。
しかし岩田…田辺の髪何でずっと持ってるんですか…(鼻血)困ってるやん田辺…。しかも科学者風情って…自分も科学者なのに…(汗)
うちの岩田結構電波の受信にムラがあるらしく、舞ちゃんの前では電波絶好調なんですね。怒らせてばっかり…。
田辺の前では電波降りて来なかったのかしら…終始真面目だったわ…。
話としては結構気に入ってるので何とか纏まって良かったなぁ。
王国サイドストーリーも結構楽しくなってきました。
瀬戸口さんとか滝川とか原姐とか話練ってるので、又頑張ってUPしたいです。
>>HP移転に伴い一部改行等調整。大筋変更はありません。