*返礼*
春雨からの荷を眺めていた来島は、突然声をかけられ驚いた様に顔を上げた。そこには大柄な男が立っており、少し眠そうな表情で口を開いた。
「レンお嬢か、河上万斉は居るか?」
「何の用っスか」
来島が思わず怪訝そうな顔をしたのは、春雨の人間が鬼兵隊のトップである高杉ではなく万斉と、彼が面倒を見ている夜兎であるレンを指名してきたからである。万斉は以前、春雨との交渉をしていた為指名されても不思議はないが、殆ど外に出されていないレンをの事を知っているのは不自然だと思ったのだ。
「…春雨第七師団・阿伏兎。そう名乗ればOKか?お嬢から先月送られてきたプレゼントの礼を持ってきた」
その言葉を聞いて来島は、先月レンが春雨の夜兎にプレゼントを贈ったのを思い出した。夜兎という種族を余り見た事がない来島は、小柄で線の細いイメージを夜兎に持っていたのだ。それとは正反対な阿伏兎の姿が、夜兎である事に直結しなかったのであろう。
「河上先輩は仕事で出てるっス。レンは…」
言葉を来島が濁したのは春雨の夜兎が、レンの引抜をしたがっていると言う事を思い出したからだ。その辺りの接触は全て万斉が引き受けているので来島も詳しくは聞いていない。しかし万斉の不在時に勝手に引き合わせて良いものか判断できず思わず視線を彷徨わせる。
「礼を渡すだけだ。なんだったら万斉の野郎が帰って来るまで待ってても構わねぇよ」
ちらりと春雨の船に視線を送った阿伏兎は苦笑しながらそういう。まだ荷卸には時間が掛かるだろうし、次の予定が詰まっている訳ではない。他意はないと言う事を示すように態々万斉を待つと言ったのだろう。
「…河上先輩の代わりに晋助様に確認とるっス」
来島はそう言うと荷下ろし場にある内線電話を鳴らし、高杉の部屋へ連絡を入れた。万斉がいない以上レンに関しての決定権を持っているのは高杉だけなのだ。
それを少し離れた所から眺めながら阿伏兎は僅かに苦笑した。警戒されるのも仕方がないが、鬼兵隊内においてもレンの事は全て万斉が仕切っている事に驚いたのだ。
「部屋に案内するっス」
電話を切った来島はそう言うと阿伏兎を連れて荷下ろし場を後にする。恐らく高杉が許可を出したのだろうと思い僅かに安心したような顔を阿伏兎はすると、そりゃどーもとやる気のなさそうな返答をして彼女の案内にしたがう事にした。
「晋助様。また子です」
「入れ」
案内された部屋が高杉の部屋だと気がついた阿伏兎は口元を思わずへの字に曲げた。仕方がないとはいえ鬼兵隊のトップと態々話をするのは面倒だと思ったのだ。だが万斉がいない以上こうなる事は仕方がないと諦め来島の後について部屋に入る事にする。
「よぉ。万斉の野郎留守でな」
煙管の煙を吐きながら声を放った高杉に阿伏兎はお辞儀をすると春雨第七師団・阿伏兎と短く名乗る。しかし直ぐにぎょっとしたような顔をした。高杉の膝にレンが座っており、わー、アブトさんやと嬉しそうの声を上げたからだ。
なにこれと思わず突っ込みたいのを堪えてアブトは辛うじて声を絞り出す。
「元気そうだなお嬢」
「うん」
機嫌が良さそうなレンの顔を見て一瞬和むがそれにしてもありえない光景である。白いふわふわのレンの髪を撫でながら高杉はまぁ、座れと阿伏兎に着席を促し来島にお茶を入れるように言う。
「で、雪兎に何か用か?」
「雪兎?」
高杉の言葉に阿伏兎が怪訝そうな顔をすると彼は咽喉で笑い、色も日に弱ぇのも雪兎と一緒だろうよと瞳を細めてレンの頬を軽く抓る。するとレンは不服そうな顔をし高杉の方を見るが彼はそれに対して笑っただけであった。
「礼を届けに来たんだ」
阿伏兎の言葉にレンは驚いた様な顔をすると、どーして?と首を傾げた。
「菓子の礼だろうよ。ホワイトデーってのがあるんだ。先月のお返しのな」
「ほんま?」
「後で万斉に聞いてみろ」
「ホワイトデーってのは俺も知らねぇけどな。団長からも預かってる」
そう言うと阿伏兎は持ってきた箱を一つ、そして手に持っていた傘を卓の上に置いた。するとレンは顔を明るくして身を乗り出ししげしげとそれを眺めた。その様子を見て高杉は彼女を膝から下ろすと、貰っとけと短く言う。
レンは嬉しそうに笑うと箱を開け中から瓶詰めの飴玉を取りだした。それを照明に翳し瞳を細める。
「おー。飴ちゃん!きれー」
「そっちは団長からだ。で、傘は前に約束したからな…俺から」
以前万斉と共に春雨の仕事を彼女が手伝った時に、阿伏兎はレンに傘をプレゼントすると約束したのだ。元々レンと共に暮らしていた夜兎のお古なのだろう、彼女の傘は随分使い込まれており大分ガタが来ていた。壊れる前にと約束していたのを思い出したレンは、嬉しそうに微笑むと傘を開きくるりと回って見せる。
傘の色は鮮やかな赤。レンの瞳の色と同じ傘を阿伏兎は選んだのだ。
「どう?」
「いいんじゃねーの?」
煙を吐きながら高杉が言うとレンは満足そうに笑い傘を閉じる。そしてその傘を持ったままぎゅっと阿伏兎の首に手を回すと、ありがとと嬉しそうに言った。
毎度の事ながらこのレンのスキンシップに慣れない阿伏兎は少し手を彷徨わせた後、遠慮がちに彼女の背中を軽く叩くと、喜んでもらえたよーでと情けない顔をして笑った。相手は夜兎なのだから力加減に気を使う必要等ないのに、つい柔らかくて小さな彼女の体を触る時は緊張する。いい年したおっさんが明らかに彼女を持て余しているのだ。その姿を傍から眺めていた高杉は吹き出しそうなのを堪えながら更にとんでもない事を言い出した。
「足痺れたからそっち座れ」
「うん」
「はぁ?」
阿伏兎が間抜けな返事をしている間にレンは阿伏兎から少し体を放すとストンと彼の膝に座った。先程高杉の膝に座っていた様にだ。体躯は高杉より阿伏兎の方が大きいのでレンはすっぽりと収まる形になっている。
「でけぇから俺よか座りやすいだろ」
「うん」
暢気なやり取りを聞きながら阿伏兎は頭を抱えたくなった。万斉だけではなく高杉もまたレンに対して多分甘やかし放題なのだろう。というか、これは新手の嫌がらせではないかとさえ疑いたくなった阿伏兎は途方に暮れたように遠くを眺めた。柔らかい彼女をどう抱えて良いのかも解らないし、そもそもこうやって人を膝に乗せるも慣れていない。彼女は自分の年齢を自覚しているのだろうかと思わずレンを見下ろすが、彼女が嬉しそうにしているのを見ると駄目だと言い難かった。精神的に成長しきっていない彼女にとって、誰かの膝に座る事は日常茶飯事なのであろう。恐らく万斉辺りが毎日そうやって彼女を抱きかかえて甘やかしているのだろうと考えると、阿伏兎は今ここにいない万斉に思わず恨み言を言いたくなる。
「お茶入ったっス」
奥から来島が茶と羊羹を持って出てきたので阿伏兎は更に途方に暮れた。傍目から見たら犯罪以外の何物でもない光景であろう。しかし来島はその光景になんら感想も表情も変化も齎さす、当たり前の様に阿伏兎の前にレンの分の茶を置くと、それじゃぁ、仕事に戻るっスと部屋を出て行った。
「なんつーか、せめて突っ込んでくれたら救いもあったんだがなぁ」
「見慣れてるんだろう。万斉の野郎が年がら年中膝に乗せてるからな」
ぼやいた阿伏兎に高杉は咽喉で笑うとそう言い煙を吐き出した。そんなことはお構いなしでレンは羊羹を口に入れ、熱いお茶を飲み干すと、更に阿伏兎の分の羊羹に楊枝を刺しそれを彼の口元へ持っていく。
「どーぞ。美味しいんよ」
「…お嬢が食って構わねぇよ」
「ほんま?ありがと」
嬉しそうに阿伏兎の分の羊羹も口に放り込んだレンを見て彼は思わず、それはオッサンには難易度高いわお嬢…と呟きやれやれと言った様に口元をへの字に曲げた。
それを眺めていた高杉が何かを言おうとしたが、それは部屋の外からの声にかき消される。
「入るでござるよ晋助」
声と同時に扉を開けた万斉に高杉は呆れたような顔をすると、先程言おうとした言葉を飲み込み万斉への小言を発した。
「だから何でテメェは声かけると同時に入ってくんだよ。意味ねーだろーが」
しかし万斉は高杉の言葉を無視するとレン…そして阿伏兎を視界に捉え僅かに眉を上げた。その反応を見て阿伏兎は思わず情けない顔をして両手を挙げる。個人的に喧嘩になるのは構わないが、鬼兵隊と春雨の関係を悪化させる訳にはいかないので全面的に降伏姿勢を見せたのだ。
「おかりなさい万斉。アブトさんがね、お返しくれたんよ」
阿伏兎の膝から降りたレンはほてほてと万斉の方に歩み寄ると、卓においてある飴玉と傘を指差した。すると万斉は少し体を屈めて彼女の顔を覗き込むと、ちゃんとお礼を言ったでござるか?と穏やかに聞く。するとレンはにこりと微笑んで頷いた。
「アブトさんにはお礼言ったんよ。ダンチョーにはお手紙書こうと思うねんけどええ?」
「そうでござるな。それでは早速書くといい」
頷いたレンは飴と傘を抱えるとほてほてと万斉の側に行き手を繋ぐ。一緒に一旦部屋に戻るつもりなのだろう。
「アブトさんまだ帰らんといてね」
「解った」
レンの言葉に阿伏兎は返答すると仕方がないと言うよな顔をして彼らを見送った。もう暫くここで時間を潰すしかないであろう。ちらりと高杉表情を伺うと、彼は煙管に新しい火を入れており阿伏兎を追い出そうという様子もなければ歓迎している様子もなかった。
「まぁ、雪兎が戻るまで好きにしてろ」
「そりゃどーも」
煙を吐きながらそういった高杉に阿伏兎は肩を竦めると随分温くなってしまった茶を飲み干した。
一方部屋に戻ったレンは万斉が準備してくれた紙と筆を握って早速団長への手紙を書く事にした。それを眺めながら万斉は三味線を背から降ろし彼女の隣に座る。
「レンは何か欲しいものあるでござるか?」
「どーして?」
「拙者もレンに礼をせねばならないでござるからな」
その言葉にレンは少しだけ首を傾げるが直ぐに、なんにもないんよと短く返事をした。その言葉に万斉は少しだけ笑うと彼女を引き寄せる。
「我侭言ってもいいでござるよ」
「万斉忙しいのにちゃんと帰ってきてくれるから、それだけでええんよ」
レンはいつも好き放題して甘やかされているが、意外に我侭は言わない。万斉はそれが物足りないような気がするのだが、その不満を高杉に零すと、ないものねだりだ死ねと冷たく言い放たれた事がある。傍から贅沢な悩みなのであろう。
「レン」
「なに?」
「今度拙者とどこか出かけようか。新しい傘も貰った事でござるしな」
その言葉にレンは嬉しそうに笑うと万斉の首に手を回し、頬に口づける。
「ありがと。楽しみにしてるんよ」
「拙者も楽しみでござる」
表情を緩めると万斉は彼女の体を漸く放し、手紙を書くように促した。邪魔をしたのは万斉の方であるが、レンはそれを気にする素振りも見せずに頷くとせっせと手紙の続きを書きだす。
「拙者は先に晋助の所に行くから、手紙を書き終わったらもってくるでござる」
「はーい」
万斉はレンの頭を撫でると、三味線を片手に部屋をでる。
戻った万斉が一人である事に阿伏兎は不思議そうな顔をしたが、これと言って言葉を発する事もなく彼が奥で茶を入れるのをぼんやりと眺める。わざわざレンがいないのに自分の所に来る理由が阿伏兎には解らなかったのだ。
「プレゼントの件は礼を言うでござる」
「別にお前さんに持ってきたわけじゃねぇけどな」
「レンが随分喜んでいたでござる」
まさか礼を言われるとは思わなかった阿伏兎は驚いた様な顔をするが直ぐに困った様な顔をする。どちらかと言えば敵意を持たれていると思っていたのに、こうも友好的だとやりにくいと感じたのだろう。それを眺めていた高杉は咽喉で笑うと瞳を細め言葉を発した。
「雪兎を膝に乗っけたのはお咎め無しかよ」
「アレはレンが望んだか、晋助が焚きつけたかでござろう」
さらりと万斉が流した事に阿伏兎は心底感謝したが、逆に高杉は不服そうな顔をする。
「俺の所為にすんなよ」
「違うのでござるか?」
「まぁ、両方正解だがな」
口元を歪めた高杉を見て、万斉は思わず呆れたような顔をする。余りにも予想通り過ぎて呆れたのだろう。阿伏兎にはそんなやり取りをしている高杉と万斉の関係は奇妙に映った。高杉が鬼兵隊のトップであると聞いているが、万斉の態度は少なくとも組織的に上に立つ人間へ対する態度には見えない。鬼兵隊という組織自体がもしかしたら上下関係に緩いのかもしれないとも思いながら黙って二人のやり取りを眺める。
「しかし雪兎もマメだな。わざわざ礼状書くなんざぁ」
「字を覚えたばかりで楽しいのでござろう。阿伏兎殿から返事が来た試しはないでござるが」
ちらりと視線を送られ阿伏兎はぎょっとしたような顔をする。何度かレンから手紙が来た事はあるが返事を出したことはそう言われてみればない。多忙であるのもあるが、レンの手紙自体が礼状であったり、一緒にした仕事の感想であったりと返事を出す必要性を感じるものでなかった事もある。何か緊急の用事があれば手紙ではなく別の通信手段を使う事もあり阿伏兎は結局一度も手紙を返す事はなかった。
「…返事って。何書けってんだよ」
返答に困った阿伏兎はそう返すが、万斉は表情を変える事無く阿伏兎に視線を送っただけであった。恐らく返事が来ればレンは喜ぶが、この男の個人的な心境としては返事どころか、レンが手紙を出す事も厭なのかもしれない。
「まぁ、適当に書けば何でも喜ぶだろうよアイツは。相変わらず字は下手くそだけどな」
無言の返答を返した万斉の代わりに、煙管の煙を吐いた高杉は咽喉で笑いながらそう言う。
「大分上手になったんじゃねーかお嬢。宛名はいつも別の奴が書いてるみてーだが」
「ああ、そりゃ俺だ。表書きもアイツに書かせたら迷子になるだろーが」
高杉の返答に阿伏兎は些か驚いた様な顔をする。目の前の男が書いたと思えないほど達筆で、そして几帳面な字であったのだ。すると思い出したように高杉は阿伏兎に、漢字教えろと短く言う。
「漢字?」
「名前。雪兎がどんな字書くか知らねぇって言うからいつも仮名で書いてるだろ?」
そういわれ阿伏兎は、ああといつも届く手紙の宛名を思い出す。『春雨第七師団・アブト様』と書かれていたのは高杉とレンがアブトの名前を音でしか知らなかったからであると納得して、高杉に差し出された紙に自分の名前を書く。
「…兎…ってツラじゃねーよな」
「ほっとけよ」
紙を引き寄せ確認した高杉が口元を歪めたので阿伏兎は口をへの字に曲げる。よもや自分の名前に使われている漢字でそんな突込みが来るとは思わなかったのだろう。
「入ってええ?」
扉の方から声がしたので高杉は、入れと短く返事をする。万斉は声をかけると同時に入ってくるが、レンはちゃんと返事を待ってから入るようにしているらしい。扉を開けて入ってきたレンは、ほてほてと高杉の隣に行くと手紙を差し出した。
「宛名書いて欲しいんよ」
「…いや、今回はいらねぇだろう」
そう言いながら高杉はレンから手紙を受け取ると、仕方がないと言うような顔をして筆を引き寄せ宛名を書く。万斉に頼まない所を見ると、どうやらレンの中で宛名を書くのは高杉に頼むと決めているのだろう。『春雨第七師団・団長様』と書くのをじっとレンは眺めていたが、卓に置かれている別の紙に気がつきそれを手に取った。
「これは?」
「ああ、このオッサンの名前だとよ」
「…こんな字書くんやね。シンスケ、これ貰ってかまへん?」
「好きにしろ。俺は覚えたからな」
名前の紙を握ったレンはそのまま万斉の膝に座ると、紙を広げる。
「阿伏兎」
「ん?」
名を呼ばれて思わず返事をしたが、レンがただ単に紙に書かれた文字を読み上げただけだと気がつき阿伏兎は苦笑する。
「万斉の字より難しいんよ」
「そうでござるな」
レンの髪を撫でながら万斉が返事をすると、彼女は紙を折り畳み阿伏兎の方を向いた。
「阿伏兎さん。ちゃんと練習するから」
「そーしてくれ」
阿伏兎が苦笑しながらそう言ったのでレンは嬉しそうに微笑むと、万斉の膝から降りて高杉から手紙を受け取りそれを阿伏兎に渡した。受け取った阿伏兎は漸く任務完了だと言わんばかりに安心したような顔をして立ち上がった。長居は無用だと思ったのだろう。そもそもレンの相手はともかく万斉と高杉に関しては進んでコミュニケーションをとる必要性も感じないし、無用な揉め事も元だと思ったのであろう。
レンは少し残念そうな顔をしたが、阿伏兎は彼女の頭を撫でると困ったように笑った。
「またなお嬢」
「…うん。また遊びに来て欲しいんよ」
そう言うとレンはぎゅっと背伸びをして阿伏兎に抱きつくと頬に口づけする。それに阿伏兎はぎょっとしたような顔をすると、慌ててレンの体を引き離し口を開いた。
「…万斉…お前お嬢にどんな躾してるんだよ」
「挨拶程度でござる。他意はない」
だから勘違いするなと強調された様な気がして阿伏兎は複雑そうな顔をする。レンは阿伏兎を不思議そうに見上げていたが、困ったように彼女を見た阿伏兎と目が合うと嬉しそうに笑った。
「気をつけてね」
「…ああ」
船に乗り込んだ阿伏兎は小さく溜息をつくとレンから預かった手紙を眺める。今まで一度も返事を出さなかったが、彼女はずっと返事を待っていたのだろうかと思うと少し申し訳ない気分になる。マメに手紙を書くなどガラでもないが、彼女が字の練習がてらとはいえ一生懸命書いた手紙に返事を出さないままいるのもどうかと思った阿伏兎は、今まで貰った彼女の手紙を思い返す。
「…まぁ、字は大分上達してるわな」
もしも彼女が自分の名前をちゃんと漢字で書ける様になったら返事でも出そうと思いながら阿伏兎は出港準備を始めた。
お嬢との距離感がイマイチつかめない阿伏兎。
お嬢大好き過ぎて行動に矛盾でまくり万斉。
20080326 ハスマキ