*序章*

 その日真選組副長・土方は朝から局長である近藤に呼ばれ局長の部屋へ足を運んだ。
 彼が不機嫌そうに襖を開け、近藤に前に座ると近藤は手に持っていた資料を纏めて土方に渡し、彼がそれに目を通し終わるのを黙って待っていた。
「あ?マジでコレやんの?」
「上のほうで決まってなぁ」
 資料に書かれていたのは新隊士の募集要項やその他新隊士募集と同時に試験的に運営される部隊の事であった。新隊士の募集は常時行ってはいるが今回の資料に書かれているのは『女性隊士募集』というものであった。
 山崎等のいる監察・隠密部隊に女性隊員を入れる為の隊員募集で、今までは山崎が女装をしたりしていた仕事を女性隊員にやらせようと言うのだ。女中や下働きとして潜入して敵の情報を集めるのにはやはり本物の女性の方が都合がよい。無論元々あった隠密部隊は今までどおり運営するが、その仕事の一部を彼女達にやってもらおうと言うのだ。
 よって必要スキルは『家事・料理・護身術(初心者歓迎入隊後指導します)』というもので、隠密としての性格適正等は幹部や現状隠密として働いている隊士に面接をさせ採用を決めるという形になる。ただ試験的な導入なので今回の募集の後継続的に募集をするかどうかは彼女達の活躍次第となるであろう。
 煙草の煙を吐きながらしかめっ面で資料を見ていた土方は眉間に皺を寄せる。
「まぁ、あれだ。一応公務員だからな俺達は。女性もできるだけ採用しないと職安とかが煩いらしくてな」
「大体募集した所で希望者こねぇよ。こんなあぶねぇ仕事」
「募集して女性がいないのと、募集しないから女性がいないのとでは天と地ほど違いがあるってとっつあんがなぁ。まぁ、一応1月位募集かけて面接とか試験するからそん時は宜しくたのむわトシ」
 拝むように手を合わせる近藤を見て土方は小さく溜息をつくとわかったよ、とだけ短く返答し新しい煙草に火をつけた。近藤も真選組ではトップであるが、幕府の組織の中では中間管理職的なポジションである。松平公や幕府幹部の言う事はある程度は聞かねばならない。頭を下げねばならない。そうやって必死で真選組の隊士を食わせて来てくれているのだ。
「そんじゃ俺はこれからとっつあんと新隊士の採用打ち合わせに行くから後はトシ頼むわ」
 いそいそと立ち上がる近藤を見送りながら土方は庭に視線をめぐらせる。
「女になんか勤まるのかよ…」

 真選組に新女性隊士が入ってくるのはそれから暫くしてからの事である。


銀魂夢小説ヒロイン前提設定

200804 ハスマキ

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