俺の可愛い妹へ

 元気にしている前提で手紙を書く。

 お前がいなくなってからどれぐらい経っただろうな。こっちは相変わらずだが、お前のいない生活にはやっぱり慣れない。けど、可愛い妹の幸せのためだと思って我慢してる。
 時々思うのは、俺にとって、先生とお前が幸せだった日常の象徴だったということだ。全てを壊したいと言っていても、結局どこかでお前に縋ってたんだとおもう。毀れた日常をまたどこかで望んでたんだと思う。我ながら女々しいが、お前と過ごした日々は矢張り、なにものにも代えがたいんだと今さらながら感じている。

 本当は、お前と一緒に歩いて行きたかった。
 けれど、今の道を選んだことに後悔はないし、先生を殺した幕府も天人もやっぱり許せないと思ってる。こんな矛盾抱えてぶっ毀れた俺に付き合ってくれて有難う。いつでも俺の逃げ場になってくれて有難う。
 お前に甘やかされるのが心地よくて、ずっとお前を殺し続けてたのは気がついてた。

 だから、せめて幸せになって欲しい。アイツに譲るのは癪だが、お前が幸せな道を歩いて行けるのなら今は黙って見送ろうと思う。
 愛してる。来世では莫迦な約束をしないように気をつけるから、また俺と出会って欲しい。次は兄としてではなく、ただの男としてお前と一緒に歩いていきたい。

 俺が死んだら、一度だけ俺の為だけに三味線を弾いて欲しい。それだけ覚えておいてくれ。
 また、暇ができたら手紙書く。返事はお庭番衆か万斉辺りに預けてくれ。待ってる。

高杉晋助

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