拝啓 タチバナカグヤ様
この手紙を読んでる時に、俺が生きてるのか死んでるのかは解らない。いつアンタが気がつくか解らないが、手紙を残しておく。
アンタと飲み友達として会ってから、どれぐらい経っただろうな。死ぬほど愚痴を垂れ流したりもした気がするが、それで俺も正直ガス抜き出来ていたと思う。アンタに甘やかされて、延々色々な事を喋ったことは、正直今となっては恥ずかしいので忘れてほしい。無理だとは思うが。
ただ、アンタがいたから、何とか破綻せずにやって来れた。そのことには感謝してる。俺はこんな生き方しかできないから、やっぱり近藤さんや真選組がアンタより上位に来ちまう。そんでも構わない、寧ろ、そうだから良いと言われた時は正直信じられなかった。もう少し自分の幸せ考えろって思うと同時に、嬉しかった。矛盾してるのは分かってる。
俺がアンタの幸せに絶対必要かどうかは解らない。けど、俺にはアンタが必要だから、これからも一緒に歩いていければ有難い。
アンタに甘やかされるの好きだった。けど、一方的なのも癪だから、気が向いたら甘えてくれても構わない。
こんな手紙読んだら、アンタはゲラゲラ笑うんだろうな。
アンタの三味線も、どうしようもなく男前な性格も、そのくせ臆病で手前ェの幸せより他人の幸せ大事だって言う所も、全部愛してる。
誰にも譲るつもりはない。そんだけは覚えていて欲しい。
けど、もしも俺が、この手紙を読んでる時点で死んでたら、アンタの幸せの為に歩いて欲しいと思ってる。高杉の檻に戻ること無く、自分のしたいように生きて欲しい。自分の幸せより、他人の幸せ望む方が簡単な手前ェの事だから、それは凄く難しいのかもしれねぇ。けど、諦めないで、歩いていて欲しい。
最後に。
読み終わったら手紙は捨てるなり燃やすなりして欲しい。読んだことも俺に伝えなくていい。
ヘタレで悪い。多分正面切って言われたら耐えられない。その辺は理解してくれてるんじゃないかと期待してる。
それじゃ、よろしく頼む。
敬具
土方十四郎