レンへ
仕事で長く留守にしているが、元気にしているか?
こうやって手紙を書く機会も中々ないので、筆を取ってみた。
いつも阿伏兎殿が手紙を貰っているのを羨ましく思っていたと拙者がいったら、レンは笑うだろうか?無論阿伏兎殿は遠い場所にいるのだから仕方が無いとは言え、拙者も同じようにやってみたいと実はずっと思っていたのでござる。
さて。
仕事の方は後数日で終わりそうなので、船に帰還するのはこの手紙が届くのとそう変わらないような気もするが、長い休暇が貰えそうなのでどこか行きたい所でも考えておいて欲しい。
レンが望む所ならどこにでも連れていこうと思っている。いつもは拙者の身体を思ってレンが遠慮するが、個人的にはレンと一緒にいられればそれでいいので、気にしないでほしい。むしろ、レンのお陰で色々と拙者も癒されている部分もとても多い。遠慮せず甘えてもらえるのが一番嬉しい。
拙者のいる場所は桜が大分ほころび始めているので、花見などいいかもしれぬな。
何を見ても喜んでくれるとは思うのだが、矢張りレンが見たことないものを見せてやりたい。珍しい桜の名所なども一緒に回ってみようか。世界はこんなに広いのに、レンにはそのほんの僅かしか見せてやれていないのを申し訳ないと思っている。けれど、初めて山から出た頃よりはレンの世界が広がって入れば拙者は嬉しい。そして、これからも、一緒に沢山のモノを見ていきたいと思っている。
最後に。
愛してる。レンの顔を早く見たい。
河上万斉